忍びよる加齢と老後の孤独に怯える、すべての女性へ 【前篇】


【BOOK DATA】
写真・左:『中年だって生きている』(集英社刊)酒井順子/著、塩川いづみ/装画、大久保伸子/装幀 2015年5月30日発行 ¥1,300(税別) 写真・右:『子の無い人生』(角川書店刊)酒井順子/著、寄藤文平+鈴木千佳子(文平銀座)/装幀 2016年2月29日発行 ¥1,300(税別)


熊本、そして九州の皆さん、余震がつづき不安な時間を過ごされていると思います。どうか一日でも半日でも一時間でも早く、皆さんの「日常」が戻ってきますように。

酒井順子さんの『中年だって生きている』(集英社刊)と『子の無い人生』(角川書店刊)を紹介する以下の文章は15日の深夜に書いていました。アップした直後にあの大きな地震があり「こんなときに本を紹介するブログなんぞ……」と感じ、非公開状態にしていました。
けど地震速報や地震に関する情報しかほぼ流れてこない深夜のタイムラインをずっと眺めながら感じた不安と孤独感に近いもの、朝になってようやく地震以外のつぶやきも流れてきたことに覚えた安堵感が、ここ数日も強烈に残っていて。そして、これは紹介する2冊と関係なくもない感情だなと思ったので、タイトルを変えて公開しました。

「こんな有事に、オマエはホントに吞気なクソひきこもりだな」と思われる人もいると思いますが、気持ちの切り替えに何でも良いから読みたいと感じられる人がいましたら、相変わらずの長文で駄文ですが、どうぞ。

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3回にわたってお届けした最果タヒさんの作品紹介は、主に文芸作品好きの方々へ向けて書いたものでした。が、今回ご紹介する酒井順子さんの『中年だって生きている』(集英社刊)と『子の無い人生』(角川書店刊)の2冊は、文芸好きのみならず、すべての女性に(そう遠くない未来に中年期を迎える女性には特に)オススメしたい作品です。

まずは『中年だって生きている』について。以下、集英社さんのサイトに掲載されている内容紹介です。(※また例のごとく、インデント+イタリック表記とさせていただきます)

中年ではあるが、おばさんではない。実は心中そう思っている美魔女世代の四十代。では、あなたたちは一体、何者なのか。そして、今後どこへ向かおうとしているのかーー。高校時代、雑誌「オリーブ」にコラムを発表してから、『負け犬の遠吠え』『おばさん未満』と、同世代の女性読者の共感を得続けて32年。中年以上初老未満女性、必読エッセイ。

この中にある「中年以上初老未満女性、必読エッセイ。」の謳い文句は、まさに嘘偽りナシ。この作品の何が素晴らしいかというと、中年女性としての生き方ハウツーにもあふれているところです。私がこの作品を読むきっかけとなったのが、作品の特設サイトに掲載されている〈刊行記念特別対談 酒井順子さん × 佐藤悦子さん〉なのですが、もうこの対談を読んでいる時点で「分る、分る! 私も同じ!」と何度思ったことか! なので、以下に続く私の文章を読むよりも、正直この対談を読んだ方が良いと思います(何せ、むちゃくちゃ面白い赤裸々なネタにもあふれているから)。そして共感された方は、ぜひ『中年だって生きている』を読んでみてください。読んで損をすることは本当にないです。

中年女性としての生き方ハウツー本としては、湯山玲子さんの『四十路越え!』(ワニブックス刊、2010年)と『四十路越え! 戦術篇』(ワニブックス刊、2011年)もあり、この2冊も参考になります(こちらも某誌の新刊紹介にて紹介しました)。ただ常に第一線でパワフルに活躍しつづけている湯山さんとは違い、ひきこもって細々と生きているヘタレなモラトリアム中年の自分には「これはタメになる知識だけど、実践する機会がないなぁ……」という部分も。ただ、これはひきこもっている自分が悪いだけなので、毎日ちゃんと通勤して、会社でバリバリ働いている女性にとっては有益かつ建設的な情報だらけです。

しかし『中年だって生きている』は、ひきこもりモラトリアム中年の私でも実践できる&見習うべきことが多く、「このモヤモヤは、加齢が原因だったのか!!」という発見も多かったです。

個人的に、特に感銘を受けたのが「少女性」の章。“文化系女子”向けのカルチャー誌の編集者を辞めてから何年も経ち(ちなみに“森ガール”という言葉が流行ったのは、私が編集部を辞めてからでした)、世間的には“いいおばさん”という年齢になってもかわいいモノ好きが止められない自分は、何かの病気ではないかと真剣に悩んでいた時期が実はありました。

でもこの「少女性」の章の中で「私達は、「いつまでもガーリー」という楽しさを既に、知ってしまいました。子供の頃からしゃぶり続けている「可愛さ」という飴玉を、今さら吐き出すつもりはさらさらありません。きっと一生、「これ可愛いー」「あれ可愛いー」と言い続け、シールや千代紙を集め続けるに違いないのです。」と酒井さんが断言されているのを読んで安心できたし、「中年女との相性は最悪の少女性」を嗜むときに心がけるべきことを、「大人になっても少女性を育み続けるという行為は、喫煙行為のようなもの」と例えながら教えてくれて「うんうん、そうですよね。私もマジで気をつけます!!」と素直に感じられたのでした。

この他にも加齢による親との関係性の変化を考察した「親旅」、職場において年長者だからこそ体験する悲喜こもごもについて書いた「仕事」、なぜ歳をとると植物が好きになるかを解説した「植物」(この章の「「このベタッとした松ヤニ……。生命力を感じるわぁ!」などと、松で興奮している人も。」のくだりには爆笑してしまった)などなど、中年女性として生きぬくための知恵が満載。

あと“いつまでも若々しくキレイでいて、性的にも生涯現役でいなくちゃ!”という昨今の風潮に対して感じていたモヤモヤを「平均寿命が延びたからといって生殖可能年齢が延びるわけではありません。(中略)何でもありのこの世の中、中年女達がどんなセクシュアルライフを送ろうと、自由なのです。が、「しているにしてもしていないにしても、黙っていろ」ということなのだろうなと、私は思います。」と清々しいまでに払拭してくれた「エロ」の章も、ちょっと感動的でした。

それと「おぉ、これは親切設計!」と思ったのが、本体表紙のデザイン。カバーを外すと、塩川いづみさんによる素敵な猫たちのイラストレーションがちりばめられた、なんとも洒落たデザインの本体表紙&裏表紙が現れるのですが、タイトルが表記されているのは背の部分のみ。


なので「移動中や外出先でも読みたい。しかしタイトルを見られたら『私は中年です!』って宣言しているようで、ちょっとなぁ……」と感じる人は、カバーをサッと外してカバンに入れちゃえばOK! わざわざ書店でカバーをかけてもらわなくても大丈夫! と、ナイーブな中年女性へのホスピタリティーがハンパありません。

と、魅力を語り出したら止まらなくなる『中年だって生きている』。加齢による変化にあたふたする前に、これを予め読んでおくだけで中年女性として生きるのがだいぶ楽になると思います。ここまでベタ誉めしていると「昔から酒井先生のファンだったの?」と思われそうですが……すみません、実はかなりのにわかファンです。

これまた書くと恐ろしく長くなるので端折りますが(もしかしたら後篇で書くかもしれませんが)『女子と鉄道』(光文社刊、2006年)と『着ればわかる!』(文藝春秋刊、2010年)で、「おや…君もオタクかい?」と『メタルギア』のオタコンばりに酒井さんへ(一方的な)親近感を覚えるようになったものの、まだ好きとは言い切れない状態が長らく続いていました。しかし『中年だって生きている』に書かれている内容が、あまりにも自分が求めていたものだらけだったので、一気に「酒井先生……好きっ!!」と(心の中で)酒井さんに抱きつきたくなるほどの好感を抱くようになったのです。

そんな状態の中で今年発売されたのが、これまた中年かつ未婚で(パートナーすら10年近くいない)老後のことを考えると眠れなくなりつつある自分にとってドンピシャな『子の無い人生』ですよ。もう語りたいことが、たっぷりありますよ!……ということで、こちらの魅力については後篇にてご紹介いたします。毎度、長くてすみません。